木村辰彦の画集から、画家の暮らしを思う

年始に、木村辰彦という方の画集を師匠、吉崎道治先生に頂きました。

繰り返しその作品を眺めています。
そして、この画集の後の方に随分とその当時の絵描きのことが書いてあります。
ここを私は何度も読み返して背筋を伸ばしています。
どれだけ暮らしが大変だったか、そして、どれだけこの画家を好きで支えた人があったか。。
これだけの画家でも世に名が出ることがないということ驚いたと、編集者の一人で収集家の人が語っています。
娘さんも文章を寄せていて、4人も子供があってとても苦労したと。奥さんはその日の夕ご飯をうどんにするか、パンにするか悩んで遠くまで買い物に行ったというようなことも書いてありました。
画家が自分で自分の絵を売りに歩くということは1番きついことです。食べていくため、絵を続けるためにそうしないといけないわけですが、さて、今日は右に行くか、それとも左へ行くか、という暮らしだったそうで、頒布会を持ったり、個展、デパートの即売会とへの出品、美術誌への原稿書き、新聞などへのカット描き、色紙、などなど出来ることはなんでもやったそうです。
本当に大変だったと思います。
私は女で、食べることは主人がなんとかしてくれるのでこれは1番ありがたい。
でも、絵のことだけでも自分で何とかするとなるとなかなかです。木村辰彦さんのことを思えば、甘い、ありがたいことだと思いますが、時々、「売れているから儲かるでしょう。」と言われることもあります。ずいぶん誤解があります。正直に言うと毎年マイナスです。プラスになったことなどありませんし、ここ30年ほど絵に描けてきたものを思うと家が建っているかもしれない。それでもこうやって続けてこれたのはこの仕事にそれだけ魅力があるからで、それを見てくれ、認めてくださる人があるからです。
今の時代、絵を描く人はほとんどみな大変です。続けていくことはとても難しい。昔はあったかもしれないけど今の時代は他に稼ぎがなければ続けられるものではありません。男性で絵を描く若い人が減ったのはそういうこともあると思います。今絵を描き続けている人は努力も苦労もしています。
今、自分で絵を売り歩いても売れません。昔もあったでしょうが、間で絵を売るという仕事がきちんとシステムとして存在します。画家とお客様との間の橋渡し、会期の案内から絵をお客様に届けるまでの仕事を受け持ってくださっている方々がいるのです。私などはこのシステムのおかげで多くの発表の場をいただいています。もちろん相当画料は減ってしまいますが、自分で絵を抱えて売るということはしなくて絵を描いていればいいのです。これは実にありがたいことです。直接買ってくださるお客様を意識しないで自分の絵を描けるのもそういう立場にいるからでもあります。
また、今の時代は絵を描く人がとても多いのでそのために教室を持つことができます。これもありがたい。そして、昔と比べインターネットや、美術誌などもあって、このブログなどでも作品を見てくださる人が大勢います。交通の便も良くなって、熱心に見てくださる方は遠くから発表の場に度々来てくださる。そして、何点も持ってくださる方もあります。本当にこれは励みになります。
お陰様で絵具やキャンバスが買えます。そして、遠くで発表や研究会などにもこの岡山から出かけて行くことができています。絵描きとして立っていられるのはそういう方々があるからです。
 
感謝しかありません。
最近画材の値段が高騰し、厳しいです。大きなキャンバスなど何万円もしてギョッとしますし、大きな絵に合わせた額を準備すると何十万もかかってしまいますが、今のところはそれでもなんとかなっています。
絵描きを続けるのは大変。でも、続けるにはそれだけの大きな意味がある。
同じ思いをしている同志たちがたくさんいます。頑張って絵だけは何としても続けていきたいです。とにかく、絵を続けることが出来さえしたら本当に幸せです。
 
今日はそんな絵描きの呟き、ひとつ。。。でした。
 
さて、教室です!!バラがたくさん咲いている、これが今日のモチーフ。ここのところ、続けて何枚かバラを描いたので気を付けていることを皆さんに伝えます。あとは自由に楽しく描いて頂ければ嬉しいです。

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コメント: 2
  • #1

    北野の空 (木曜日, 16 5月 2019 10:31)

    山本佳子先生

    こんにちは。

    「絵描きを続けるのは大変、でも、続けるにはそれだけの大きな意味がえる」

    本当にそうだと思います。
    儲かる儲からない、そんなことを基準にしていたら、やってられないし、儲かることは他にありますからね。

    何よりも、描かないではいられない何かが、自分の内々から湧いてきてしまう、
    何かに出会ったとき、瞬時に感性が触発され、それが色と形に、ついつい結びついてしまう、
    そういう衝動を何とかするために、絵描きは絵を描き続けるしかない、
    そんなもんかな、なんて、乱暴な言い方かもしれませんが思います。

    誰の真似でもない、その人の顔が浮かぶ絵、そういう存在の絵を描きたいものです。
    山本先生は、「個の顔」がすでにしっかり刻ませている作家さんだと思います。
    思いついたことをつらつら書きました。
    ブログの内容に、いつも励まされてきます。




  • #2

    山本佳子 (火曜日, 03 9月 2019 13:52)

    北野の空さま

    コメントいただいていましたのは返信していなかった!
    今、読み返してジーーーンときます。

    そうなんです。描かずにはいられないから描くし、それが生きることと直結しているように思います。

    でないと、絵なんてやってられません。。

    これからも揺れながら、躓きながら描かずにはいられない衝動で描いていきます。

    いつもあたたかいコメント、励みになります。ありがとうございました。